前回のコラムでも書きましたが、私、苗字が3回変わってまして
1回目は両親の離婚
2回目は婿養子で結婚
3回目は婿養子の結婚が離婚
です。
それで、ある時母親から、
母親が独身時代に使っていたハンコを貰ったんですよ。
でも「今はもう名前が変わってるから、このハンコ使えないじゃん」と思ったわけです。
そしたら母親が
「カイコクしなさい」
って、知らない単語を言ってきたんですよね。
「へ?カイコク?」
と、ペリー来航とか鎖国とか
歴史の授業で習った江戸末期の下関のことを
考えていると
「カイコクっていうのは、改刻っていって
ハンコを削って新しい文字を彫ることを言うのよ」
って母親が興奮気味に教えてくれたんです。
そのハンコは、結構良い材質で出来ていたので
「名前が変わった程度で捨てずに改刻をして使い続けろや」
って母親は思ったんでしょうね。
それでハンコ屋さんのところに行って
「改刻お願いします」
と、店の奥でテレビを見てるおじさんに言うと
1.垂直にカットして
2.新たに彫る面を出して
3.そこに新しい苗字を彫る
といった感じでちゃんと彫ってくれる訳です。
今でもそのハンコを持っていますし
書きながら気づいたんですけど
母親の形見なんですよね。
ただ、その後も何度か改刻を繰り返したため
どんどんハンコが短くなっていくんですよね。
普通ケースの中にピッタリと収まるはずのハンコが
僕の場合、振ると中でカラカラと音がするんですよ。
なんと言ってもハンコが短くて
ケースの中に隙間が出来ている訳ですから。
でも母親の形見だと思うと
その音も「もう離婚すんなよ」っていう
母親からのメッセージなのかも知れないですね。